前世の記憶くらい愛と気合いで持ち越してくださいませ

（side エンディミオン）

▼side エンディミオン（エディ）

　ソフィア姫は、前世から行動力の塊だったが、まさか今世では彼女が冒険者を目指すことになるとは思わなかったな。

　前世の『俺』が、ソフィア姫を心から愛し守ってくれる相手が現れるまでは、兄代わりとして守り抜くよう願っている。

　婚約者という立場は、彼女を守りやすい立場になるための口実にすぎない。

　前世の『俺』は騎士団長という立場にはあったが、ソフィア姫に対して……というより、『俺』の生まれた国を滅ぼしたあの国に対して、騎士としての忠誠心は無かった。

　ただ……放っておけなかっただけだ。

　前世で、叶わぬ恋に涙を流していた幼女が、今世でも彼の生まれ変わりのあの人に叶わぬ恋をしてしまわないように、形だけでも『婚約者』となることで、彼女の責任感の強さを利用して恋愛感情を制限させてもらったが……本当にこれでよかったのかと、今でも疑問に思うことがある。

　その上、ソフィア姫の前世の両親の転生体が、前世の記憶が無い上に、恋愛に関して、ここまでポンコツだったのは想定外だったが……彼らが恋仲になってくれないと、今世の僕とイレーネ嬢との婚約の話が再び浮上してしまう可能性も高いので、ソフィア姫と僕との婚約は現状維持するしかないのだが……。