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わたくしは、イレーネお義姉様とクロードお兄様との婚約破棄を阻止したかっただけですのに……なぜこのようなことになってしまったのかしら?
わたくしの目の前にいるのは、一部黄緑がかった金髪が混じる艶やかな黒髪にエメラルドグリーンの瞳の美少年。
「クロード殿とイレーネ嬢の婚約の話が白紙に戻ってしまうのは、僕としましても都合が悪く……前世の記憶持ちの転生者の中でも行動力の塊だったあなたを野放しにしていては、兄上と姉上にご迷惑がかかってしまいますから、ソフィア姫には、表向き僕の婚約者として留学していただくことになりました」
エンディミオン・エメラルディア。
わたくしが生まれたアクアリオン王国の隣国、エメラルディア帝国の皇太子ですわ。
前世では、わたくしが暮らしていた城で騎士団長をしておりましたの。
皇室付属の騎士団のほうで、近衛騎士団のほうの騎士団長は引き受けてくださりませんでしたけれどね。
「前世の俺の息子がこの世界に転生していたならば、ソフィアを任せることができたけれど……」
そう告げたのは、アーサーお兄様。アクアリオン王国の第一王子ですの。
わたくしとクロードお兄様の兄ですわ。
アーサーお兄様はアクアマリンのようにきらめく水色がかった銀髪、クロードお兄様は淡い色合いの金髪、わたくしは淡く青から緑にグラデーションがかかった銀髪ですが、瞳の色は共通して金色ですの。
アーサーお兄様は、前世では、わたくしが皇位を継ぐ時にわたくしに婿入りした他国の王子の父親……元国王だったそうですの。
前世のお父様やお母様と同じで、名前の一致は偶然だと思っておりましたのに……。
この世界、わたくしたちが前世で生まれ育った世界とは異なる魔法世界ですから。
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