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(閑話1)
「トラヴィスさま、あの……」
「ソフィア姫、どうしたの?」
ピョコピョコと動く猫耳……あれはやはり作り物ではございませんのね。
……って、そうじゃなくて。
せっかく出会えたのですもの。
聞くだけ聞いてみるのですわ。
当たって砕けろと言う言葉があるそうですし。
「こ、これから、『トラヴィスパパ』とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
言ったものの、途中で恥ずかしくなってうつむいてしまいましたから、今、トラヴィスさまがどのような表情を浮かべているのかわかりませんの。
「……そう、呼んでくれるの?」
呟きに近い声を不思議に思って顔を上げれば、口元を片手で覆い隠し、頬を朱に染めて瞳を潤ませているトラヴィスさま。
「あの時期、S級冒険者に要請があってたまごへの魔力供給は行ったけれど、親と呼ばれる資格なんてないと思っていたから……そう呼んでくれるなら嬉しい」
ふわりと微笑んだトラヴィスさまのそのお姿は、とても愛らしい笑顔で……ギャップ萌えとやらで恋に落ちるかたも多いかもしれませんわね。
「トラヴィスパパ、それでは、わたくしのことは、ソフィア姫ではなくソフィと呼んでくださいませ」
「わかった、ソフィ」
わたくしの名を紡いだトラヴィスパパが浮かべた笑顔は、とても慈愛に満ちたものでしたの。
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