(閑話2)

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 アーサーは、前世で過ごした異世界では、国王になる前の王子時代に、邪神の依り代にされていた父王を救うためダンジョン攻略などもしてS級冒険者に数えられるようになった救世の英雄でもあった。  ちなみにその時の邪神は、聖獣時代のアーサーが生まれた世界を滅ぼした者でもあり、前世の世界で色々あって許されたのちにこの世界を創造した創世神の片割れである。  アーサーの前世の両親が、この世界に転生してもアーサーの両親だったのは、おそらく邪神時代に狂わせてしまった運命への償いのつもりなのだろう。  アーサーが聖獣だった世界でも、邪神に狂わされた運命に抗った聖女たちが転生先でアーサーの両親となったことをアーサー自身が喜んでいたから。  今世は今世で、この世界の創世神のもう片割れがやらかしたことに巻き込みかけてしまったが……対抗勢力としてたまごを生み出した一連の件がなければソフィアは生まれなかったため、アーサーもアーサーの両親も、他に同時期に生み出されたたまごから生まれた子の親たちも、結果オーライだと思っている。 「〝キングダンジョンスライム〟?」  木箱に書かれている文字にアーサーは困惑した。 「それは、キングダンジョンスライムを倒したときのドロップアイテムの霜降り肉だと思いますよ」 「キングダンジョンスライムは、通常のダンジョンスライムと見分けがつかないのですが、出現率は低いとされていて、倒すと、その木箱入りの霜降り肉をドロップしてくれるのですよ」 「そうなのですね」  教えてくれた騎士たちに返事をしながら、アーサーが木箱を持ってみた感じからしても、中身は詰まっていると思われる。 「父上たちに報告したあと、料理長に相談してみましょうか」  さすがに城で働く者全員分は量的に厳しいが、それなりの量の木箱入りの霜降り肉が送られてきていたため、アーサーは城で働く者たちにも提供できるようにしたかったようだ。
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