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「率直に問います。ディアン殿と今世で巡り会えたならば、俺との婚約――」
「そのままで構いませんわよ?」
思わず言葉を遮ってしまいましたが、わたくしとエディの婚約は、利害の一致からのはずですわ。
「元々、政略結婚ですの。前世も、今世も」
政略結婚とはいえ、ディアンのことを愛していなかったわけではございませんが、ディアンもわたくしのように前世の記憶を持っているとは限りませんし、前世の記憶が無いのであれば、混乱させたくありませんの。
「それにわたくし、エディのこと、嫌いではございませんのよ?」
「……え?」
なんですの、その驚いた表情。
「わたくし、年上趣味なわけではございませんのよ? アリエスさまには憧れておりましたが、憧れと恋の区別がつかないような、お子さまではございませんの。立派なレディですもの」
わたくし、至って真剣に答えましたのに、なぜかエディがお腹を抱えて声を圧し殺して笑っておりますわ。
「くっ……ははっ」
ついに声をこらえきれなくなったようですの。
「……あなたがそう仰るならば、そういうことにしておきましょう」
「なっ!? わたくし、立派なレディでしてよ?」
失礼ですの。
「そこは否定していませんよ」
苦笑を浮かべながらエディが呟いておりましたわ。
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