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帰宅するために駅に向かうと、駅のホームで、見覚えのある顔の人が携帯をいじっていた。
「あっ」
泣きそうな私を見て、佐竹さんは目を見開いた。
「大丈夫でしたか、あの後。酷い会でしたもんね」
佐竹さんは、私があの合コンで傷ついていると思っているらしい。まあ、確かに傷ついてはいるけれど。きっとうちに帰ったら酒飲んで泣くけど。
「さ、佐竹さんは、もう帰るんですか?」
「ああ、はい。あの騒動の後、抜けてきたんです。流石に居づらすぎて……今回の合コン?も、本当は行きたくなかったんですけど」
佐竹さんは、そう言って頭をかいた。
「白城さんにどうしてもって言われてきたんですよ、凄く親友はいい子で佐竹くんとお似合いだからって」
「貴子が?」
「はい、まあ周りに安藤さんたちもいる状態で言われたんで、不安しかなかったですけどね」
私は、それを聞いて余計に悲しくなった。
「連絡先、交換しませんか?」
「え?」
「折角なんで、アニメ……も好き?なんですか?それとも僕が好きだからそうやっていうように言われたとか?」
佐竹さんは、今回の合コンで私を同族だと思ったのか、単に気に入ったのか、最初よりはフランクに私に話しかけてくれた。
そして、あまりにもあの人たちとの付き合いでなのか、疑心暗鬼気味に連絡先を聞かれ、私は今日初めて笑ってしまった。
電車が来て、私たちはそのまま流れるように座席に座った。
4人席の一番端に私が座って、その隣に、佐竹さんが座った。
隣同士で、距離も近い。こんなに至近距離に知り合いの異性が座ることが今までなく、私の胸はさっきあんなことがあったのに、もう女らしく早鐘を打っていた。
「好きですよ、私、アニメ……」
そう言って、私は一度も鞄から出していないスマホを取り出していた。
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