ごめんね、美子

12/12
前へ
/12ページ
次へ
帰宅するために駅に向かうと、駅のホームで、見覚えのある顔の人が携帯をいじっていた。 「あっ」  泣きそうな私を見て、佐竹さんは目を見開いた。 「大丈夫でしたか、あの後。酷い会でしたもんね」  佐竹さんは、私があの合コンで傷ついていると思っているらしい。まあ、確かに傷ついてはいるけれど。きっとうちに帰ったら酒飲んで泣くけど。 「さ、佐竹さんは、もう帰るんですか?」 「ああ、はい。あの騒動の後、抜けてきたんです。流石に居づらすぎて……今回の合コン?も、本当は行きたくなかったんですけど」  佐竹さんは、そう言って頭をかいた。 「白城さんにどうしてもって言われてきたんですよ、凄く親友はいい子で佐竹くんとお似合いだからって」 「貴子が?」 「はい、まあ周りに安藤さんたちもいる状態で言われたんで、不安しかなかったですけどね」  私は、それを聞いて余計に悲しくなった。 「連絡先、交換しませんか?」 「え?」 「折角なんで、アニメ……も好き?なんですか?それとも僕が好きだからそうやっていうように言われたとか?」  佐竹さんは、今回の合コンで私を同族だと思ったのか、単に気に入ったのか、最初よりはフランクに私に話しかけてくれた。 そして、あまりにもあの人たちとの付き合いでなのか、疑心暗鬼気味に連絡先を聞かれ、私は今日初めて笑ってしまった。  電車が来て、私たちはそのまま流れるように座席に座った。 4人席の一番端に私が座って、その隣に、佐竹さんが座った。  隣同士で、距離も近い。こんなに至近距離に知り合いの異性が座ることが今までなく、私の胸はさっきあんなことがあったのに、もう女らしく早鐘を打っていた。 「好きですよ、私、アニメ……」 そう言って、私は一度も鞄から出していないスマホを取り出していた。  
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加