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「藤宮ー。呼ばれてっぞ」
HRを挟んで最後の1問になった時だった。
男子の声に教室の入口に視線を移すと、女子が3人立っているのが見えた。
「またモテてるねー」
私がぼそっと呟くと、藤宮はこれ見よがしにため息をついた。硬派な彼は女子にわりと人気がある。
『ギャップ萌えかなあ。アイツたまーに笑うよね。デレたところを独り占めしたい欲求に駆られるのかも』
麻衣に言わせると、そういうことらしい。
部活ではいつも真面目に練習に打ち込んでるし、機嫌よくしてるから私には有り難みがわからない。
「女なんてうぜえよ」
「一応私も女子なんですが」
「あ…、ごめん」
元々、女だと思われてないのはわかっていたから軽口のつもりだったのに、彼が怯むから私の方が気を遣ってしまう。
「髪も切ったし、仕方ないかー」
「ちょっと行ってくる」
気まずさを隠すように勢いよく立ち上がって、藤宮は教室を出ていった。彼と女の子たちが、開いた扉の向こうを横切って視界から消えた。
私とは普通に話すくせに
何でだろう。それに、自分のことを好きだって言われたら、私なら嬉しいけどな。
藤宮はしばらく帰ってこなかった。
待ってるべきなのか、先に切り上げた方がいいのか考えあぐねていると、扉の陰から彼の顔が覗いた。
「悪い。遅くなった」
「どうだった」
「告白断ったら他の二人に説教された。それで手間取った」
むくれた顔で彼は乱暴に椅子に座った。
「何で断るの。話してみりゃいいじゃん」
「やだよ。めんどくせえ」
「えー。酷い」
「だいたい3対1って卑怯だろが」
それはそうだ。
彼がつれないのはともかく、逆ギレされてもかわいそうだ。
「群れる女は嫌いだ」
「女子はそういうものだよ」
「竹内くらいさっぱりしてると気が楽なのに」
「まあ、学校も部活もずっと一緒だしね。男友達と変わんないでしょ」
「…いや。それとは違う」
じゃあ 何?
その質問は返せなかった。
私がもっと女の子っぽかったら、先輩とも上手くいったんだろうかって考えるから。
たとえ相手が藤宮でも、今はっきり言われたら、自分に自信がなくなってしまうから。
最後の問題を解くと、藤宮は帰り支度を始めた。
私も鞄を取り出した。
「どこで買うんだ」
「え?」
「アイスだよ。食うんだろ」
「…あ。ありがとう」
「ったく、物好きだよなぁ」と彼がぼやいた。
ていうか
お礼を言うのは藤宮でしょーが
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