光を失う

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光を失う

 僕、谷本(あきら)は幼い頃から冴えない人間だった。  勉強は平均以下だし、運動もできないし、どこにでもいるような平凡な外見だし、人と話すことも得意じゃないし、秀でたことなんて何もなかった。  何事もなく高校を卒業した後、地元の大学へ行き、一般企業に就職して、ごく普通のサラリーマンとして働いている。  そんな僕にも、愛する恋人がいた。  奥野里実(さとみ)は、笑顔がとても似合う素敵な女性だ。明るい性格で、人のことを悪く言わず、素直で純粋なところに僕はだんだんと惹かれていった。人と関わることが少なかった僕が、初めて恋をした。  里実はこんな僕には勿体無いほどの彼女だ。 だけど里実は僕がいいと言ってくれた。陰でひっそりと生きていた僕を見つけてくれた。里実のおかげで、僕は自分を少し好きになれたような気がした。  薄暗かった世界に差し込んだ光。平凡だけど幸せな毎日。これからもずっと、続くと思っていた。
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