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1.5
時は遡り約十年前。その年に彼女と出会った。僕は交通事故で両親を亡くして祖父母に引き取られ、ここにやって来た。
その村は当時から住民は三桁に満たず、山間部に存在している。村から出ることは許されない、という重要な部分は祖父母にないしょにされていた。すぐに気付いたけど。
「岡田桃樹です、八歳です!好きな食べ物は苺で、食べることと絵を描くこと、あと走ることも好きです。よろしくお願いします!」
パチ、パチ、パチ。
年齢も性別もバラバラな九人前後からの疎らな拍手は、教室に虚しく響いた。
アニメや漫画ならばこのあと「じゃあ桃樹君は○○さんの隣ね」と言われて、隣の席のクラスメイトが美少女……なんて展開になりかねないが、ここはあくまでも現実だった。
僕の隣の席にはぽっちゃり体型で高学年の男子が選ばれた。
うええっ、最悪。そう嘆きつつ前の席の女子に目線を向ける。
同い年ほどの身長にしては、背筋の良いすらっとした身体。ふんわりとした茶髪混じりのボブヘアスタイル。
彼女の最初の印象は「後ろ姿綺麗だな」。なんて素朴な感想だろう。
やがてチャイムは休み時間を告げる。先生の合図と共に「気を付け、礼」をすると、彼女は「礼」から戻る勢いのまま、こっちを振り向いた。
「こんにちは!私は篠原まりいちゃん!」
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