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まりいは、僕に右手を差し出して、無邪気に笑っていた。僕も右手をそっと近付けて、握手した。
「まりいちゃんよろしく。何歳?」
「はちっ!」
「わあ、おんなじだね。嬉しい!」
「私もー!」
嘘だった。実際はここまでのまりいとの会話で「嬉しい」の感情など無かった。
子供らしくはない考えだが「自分と話そうとする人は自分を騙そうとしている人」だと僕は思っていた。信用は毒だと恐れていた。
「もーき君ってどうしてこの村に来たの?」
「んー、おばあちゃん達と遊びたかったから!それと、僕は桃樹!」
「桃樹君かあ、わかった!」
祖母と遊びたかった。それもまた、その場で考えた嘘だったけれど。まだ八歳で未熟な僕は、僕にしては上手く誤魔化せたなって喜んでいた。
これが嘘つきの僕と彼女の出会いだった。
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