会社の現状

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「叔父さん、そんな身売りのようなことをしなくても、まだ大丈夫です。それに、そんな縁談はお断りします」 「いや、悪いけどね、稚奈ちゃん。これは会社の吸収合併の条件なんだよ。彼はね、兄さんの生前に一度この会社へ見学に来ていて、君を見初めたんだそうだよ。兄さんにも挨拶してあったそうだ」 「嫌です!そんなこと、父からは聞いてません!」   「あのね、稚奈ちゃん。母屋やこの研究所の研究費だって馬鹿にならない。義兄さんは何もお金の計算をしていない人だったからねえ」 「そんな……」 「ほら、母屋のほうは幸子さんに聞いたらね、いいご縁なら稚奈に勧めてみて下さいって言われたのよ」 「……嘘……」  幸子叔母さんはお父さんの一番下の妹。母との離婚後、たまに、私を見に来てくれていた人だ。 「というわけでね、今週末の土曜日、お見合いというかまあ、顔合わせがあります。そのつもりでね。あ、お着物とかそういうものは私の方で準備するから、稚奈ちゃんは、土曜日は朝から美容院。いいわね」 「……」  この人達には何を言っても通じない。そんな悲しみが心を黒い雲で覆った。  
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