素性

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素性

「稚奈さん。何だったんです?」  仕事場である研究所に戻ると、同僚である沢田君に尋ねられた。 「うん……ちょっと。はあ……」  フラスコを机においた彼は私を見て言った。 「ろくな話じゃなかったんですね。稚奈さん、もっと強く出てもいいのに……」 「え?」 「社長は稚奈さんに株を遺言で半分近く譲渡したんですよね。だったら、何も副社長達の言いなりになる必要なんてないですよ」  驚いた。沢田君は話を聞いていたんだろうか? 「聞いてたの?」  沢田君はため息をついた。 「やっぱりね。そうじゃないかと思いました。何かうちの会社のことでしょ?最悪売却とか合併とか……」  びっくりする。鎌かけられたのか。それにしても鋭い。さすが、お父さんが次の室長候補と言っていただけのことはある。 「あの人達は、よくわかってませんからね。今どういう研究をしていて、先々何を考えて我々がやっているか……お金の問題もそれに関係してますけど」 「確かにそうよね……」 「それで、どうするんです?何があったかよくわかんないですけど。僕に相談して下さいよ。力になります」
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