素性

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「総帥には許嫁がいたが、政略結婚で性格が合わなかったらしい。総帥は栞を彼女のバイト先の料亭で見初め、卒業間近の大学生だった栞と付き合いだした。親にも内緒で産んだ子供が京介君だ。そのせいで両親と不仲になった。彼の実家から息子の父親の素性を隠すよう言われていたんだ」 「ひどいわ」 「だが、二人は愛し合っていた。正妻に子供が望めなくて、総帥は正式に認知して京介君達を迎えるつもりだった。そのため、彼女を別宅に大切に囲っていたんだ。そして京介君は小学校の時に本宅へ引き取られた。だが、表向き母親は正妻になった。総帥は立場上離婚できず、栞は彼を取られて落胆した」 「可哀想に……」 「京介君が引き取られる二週間前……彼を奪われたくなかった栞はうちへ逃げてきた。だが、私にとって妹のような存在の栞を、お前の母は昔から目の敵にしていたから……勘違いしたんだ。京介君を私の子だと思っていた」  そうか、かくまっていたから色々ごまかしていたんだね。 「だから、京介さんが何かあれば助けてくれるの?」 「そうだな。でも、今の彼の立場は微妙でね。うちのために無理をするなと言ってある」 「京介さんが御曹司……やっぱりそうだったんだね。いつも身なりがいいし、おかしいなとは思っていた。京介さんは私が小さいときのことをそれで知っていたのね」
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