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「いいわけないよ。君も、先生も余計な苦労をした。僕はね、稚奈さんにも本当に謝りたかったんだ。申し訳なかった」
彼は立ち上がると頭を深く下げた。
「やめてください。頭を上げて。そんなの求めてない。今日助けて下さっただけで十分です。株のことですが、父が内密に?」
「そうだね。お母さんから叔父さんに渡る可能性も危惧されていた。それで全部をお母さんに渡さず、僕へよこした」
「お父さん……」
「僕は株がなくてもどうにかする予定だったからね。これでも少しは金持ちなんだ」
「ふっ……少しですか?嘘ばっかり……」
「本当だ。まだ自分の資産はたいしてないんだ。父が僕を跡取りにしたくても、相互の叔父やいとこが他にもいてね、僕の出自を理由に攻撃してくる。防衛のために少しお金を最初から持たされているんだ」
「じゃあ、どうしてお父様はあちらと組んで?」
「父も誤解している。君のお母さん同様だ」
「え?」
「僕が父の子であることはDNA鑑定でハッキリしている。ただ、気持ちの問題だろう。父を頼らず、先生を頼った母。母は父を正妻の味方だと思ったんだろうね。父はただ、母を守りたかったのに……」
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