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「稚奈さん、僕とお付き合いしてくれる?嫌なら僕を利用し、隠れ蓑にしてくれていい」 「そんな、おうちの方がきっと許さない。お父様は高藤化学の買収やお見合いを許したんでしょ?」 「僕の側にいるのが君と会社にとってはおそらく一番安全だよ。何しろ、僕は自分を人質にしても君を守ると決めているんだ」  彼の目は本気だった。うちに対する負い目もあるんだろう。とりあえず、気の済むまで付き合って、彼が御曹司としてお相手が出来たら身を引こう。そう思った。  正直会社のこともあるので、彼に頼るしかない。従業員のためにもそうするしかないと思ったのだ。 「わかりました。じゃあ、助けて下さい。お付き合いさせてもらいます。よろしくお願いします」  立ち上がって頭を下げた。すると、私の両肩に手を置いた彼が私を自分の方へ向けた。 「大変だったね。もっと早く助けたかった。色々あって遅くなって済まなかった」  そう言うと私をそっと抱き寄せた。ふんわりと彼の香水に包まれた。イランイランの香り。私も大好きだ。香りの勉強をしていたので実は結構詳しい。 「イランイランに少しラベンダーが加わっている香りですね」
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