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「は?さすがだな。稚奈博士」 「うふふ。京介さんは何の研究を?」 「僕は……高校時代に少し先生の研究室へお邪魔していただけだよ。大学は経営を学ばされた」 「そうでしたか。父はその頃まだ大学で教えていたんですね」 「そうだね、特許を取得されてから変わってきたからね。君に何か残したかったんだろうな。君がこの道を目指しているとあの頃から嬉しそうに話されていたからね」  そうだったんだ。お父さん。思い出してしまい、つい涙があふれた。彼がハンカチをだして涙を拭ってくれた。 「……ごめん、泣かないで。これからは、僕がお父さんの代わりと言うには頼りないかもしれないけど、君を守るから何でも頼って欲しい」  こくんと頷いた私の額に彼がキスを落とした。私はびっくりして顔を上げた。 「我慢できなくて、ごめん。あまりに可愛くて……さてと、帰ろうか」  ドアを出ると、黒子のような男性が現れた。 「柴田。彼女の着替えと荷物を……」 「それでしたら、すでに準備しております」 「……あ、あの」  彼は私を見て言った。 「ああ、彼は執事。僕付きのね。柴田だ。このあいだ、渋滞で来なかった奴だよ」
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