彼のお父様

2/10
前へ
/68ページ
次へ
 彼は私の頭にキスをひとつ落とすと消えた。何なの、もう……。ここに来てから、ことある毎に充電させてと言う。 「君の気配というか、僕の中に君の香りが消えると僕はピコン、ピコン、とランプがついてね、早く君を充電しろと身体が言うんだよ」 「……何、子供みたいな嘘言ってるんです?」 「あ、何その目?嘘じゃないよ、本当だから。君がここへ来てから、部屋に君の香りがするようになった。ラベンダーとオレンジの香り。僕はもう、絶対一人では暮らせない」 「はいはい、わかりました。これでいいですか?」  彼を後ろからそっと抱きしめた。 「だめ。もっとちゃんとやってよ」 「ちゃんとって……」  彼は私をぎゅっと抱きしめると首筋に頭を入れて、こめかみ近くにチュッとキスをした。  顔を上げた彼は私を見下ろした。 「僕らは結婚前提で同棲中だよね?」 「……まあ、表向きはそうです」 「表向き?何それ?裏向きもそうだよ」 「ぷっ!」
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1073人が本棚に入れています
本棚に追加