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「稚奈。紹介する。彼は京介君。私の古い教え子で、長い付き合いだ」
「あ、この間の……お久しぶりです」
「ああ、この間は送ってもらってありがとう。助かったよ」
「京介君。稚奈は今年からうちに入った」
「そうですか。先生のお子さんなら相当優秀ですよね、きっと……」
私はそのフレーズにじんましんが出るほど拒否感がある。皆に言われているのだ。
「やめてください、本当に、父には逆立ちしても、何十年経ったってかなわないとおもいます」
「ずいぶんと控えめなんだな。小さい頃だって試験管両手で振って遊んでいたじゃないか」
「え?」
「昔、君がまだ小さい頃にいじっていたのを見たことがあるよ」
「そうなんですか?」
私を見ながら微笑みを浮かべている。うわ、笑顔が素敵だ。相変わらず格好いい。思わず頬が赤くなった。
「京介君、大丈夫かい?時間……」
「はい。先生、では失礼します。稚奈さん、また……」
そう言って、彼は出て行った。
「あの、送りましょうか?」
外にでて彼に言った。
「いや、ありがとう。今日は大丈夫だよ。お父さん、あまり顔色が良くないね。大切にしてあげなさい」
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