自覚

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 あ、知ってるんだ。じゃあ何? 「あのね、大学時代から私の家の仕事と彼のうちの仕事は関係があって、いずれ結婚も視野に付き合っていたの」 「そうだったんですね」 「それなのに、小さな下請け企業の娘の貴女がしゃしゃり出てどういうことなの?」 「……どういうことって、別に、あの、直接京介さんに話して交渉なさってください」 「は?あなた、何考えてるの?京介さんが好きじゃないなら、身を引きなさいよ」 「私が身を引く引かないより、おそらく京介さんが自分で判断するでしょう。私が必要なければ捨てると思います。ご心配には及びません」 「あなた、変な人ね。それに京介さんのこと……特に好きじゃなさそうね」 「好きじゃないなら、一緒にいませんよ」 「なら、何?好きだなんて嘘だわ。好きだったらそんな風に冷めたもの言いはできないもの。あなた、そのうち捨てられるわね」  彼女は紅茶を飲み干すと、フンと言いながら立ち去った。支払いは私なの?お嬢様はこれだから、困る。  店を出たところで腕を急に引っ張られた。びっくりして振り返ると焦った顔をして彼が立っていた。
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