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ここは父が社長、父の弟である叔父が副社長をしていた会社だ。父が亡くなり、実質叔父が社長職のようなことをしているが、まだ正式には就任していない。
「それでね、実はとある会社の傘下に入ろうかと思っているんだ」
「どういうことですか、叔父さん。それってうちの会社が自力ではもう……」
「まあ、何とかやっていくくらいは出来るだろうけどね、実は……」
「私が今している研究は?最先端ですよ。父も言ってましたけど、形になればかなりの……」
「そんなものは先々金になるかわかりはしない」
「叔父さん!」
私が声を上げたところで、叔母さんも入ってきた。
「稚奈ちゃん。実はあなたにとてもいいお話が来ているのよ」
叔母さんは叔父さんの隣に座り、目配せすると大きな写真を開いて見せた。そこには神経質そうなメガネをかけた男の人がスーツ姿で映っていた。
「この方は高藤化学の社長の息子さんで相互茂さんよ。稚奈ちゃんより八歳上の三十三歳。丁度男盛りよ。化学者で理系の稚奈ちゃんとは意見が合いそうよ。ぴったりだわ」
「……」
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