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木べらのスプーンで口へソフトクリームを運びながら、ミルキィはぼんやりと毛玉を観察する。
獣の姿をしているということは、少なくとも中位以上の精霊ということだ。
下位精霊は精霊としてはまだ未成熟ゆえに、獣の姿形すら保つことができない。
上位となれば人の姿に転ずることも出来るが、目の前の毛玉は人の姿に転ずる様子がない。
ソフトクリームを食すならば、人の姿の方が食しやすいだろうに。
何口目かになるソフトクリームを口に運び、舌に広がる甘さに頬を緩める。
「ねえ、プリュちゃんって何ちゃん?」
「ぷりゅはプリュイちゃんだよ」
毛玉――プリュイは、ぺろりと口周りを舐めて顔を上げた。
食べる速度がゆっくりだからか、既に半分ほど食べ終えたミルキィと違い、プリュイのソフトクリームはあまり減っていない。
それどころか、くるりと渦巻くソフトクリームの先は溶け始めており、くたりとへなってきていた。
「ぷりゅはあおっぽいけど、ちちうえははくろうのせーれーだよ」
へへんっとどこか自慢げであり、その姿が微笑ましくてミルキィは顔を綻ばせた。
「てことは、プリュちゃんのお父さんって“白”を持った精霊なんだ。すごっ」
精霊の“白”とは、上位精霊の中でもさらに強い力を持った精霊のことだ。
精霊の間でも白の色を持つことは憧れの的であり、その色を目指して日々修行に励む精霊も多いと聞く。
プリュイの父親は白狼らしいので、文字通りに白い狼の精霊ということなのだろう。
ということは、彼女は犬でなく狼の精霊ということか。
そのことに、自身の事情ゆえなのか、ミルキィは少しばかり親近感を覚えた。
「何個も質問ごめんね」
じぃと溶けかけのソフトクリームを見つめるプリュイに、ミルキィは最後の問いをすることにする。
これが本題と言ってもいい。
「プリュちゃんは迷子だったりする?」
精霊としての位は中位だろうと予想しているが、彼女の言動からして、まだ親の庇護下にある齢に思えるのだ。
ソフトクリームから視線を外したプリュイがミルキィを見やる。
碧の瞳が瞬き、そして、にぱっと元気に笑った。
「うんっ! ぷりゅ、まいごだよ! てんいしようとしたら、しらないとこにてんいしちゃったの」
「……」
ミルキィの金の瞳が瞬く。
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