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金曜の夕方6時半。
週末とあって皆定時早々退社していった。
社内に残っている人員は僅かで、どのフロアも閑散としていた。
人が少ないお陰で仕事が捗る。
窓から差し込む夕日の光を浴びながら本日最後のフロア清掃業務に勤しむ。
「凪ちゃん、ゴミ回収お願いね」
「はーい、了解でーす」
佐伯さんにフロア清掃を任せ、私はフロアのあちこちに配置されたゴミ箱のゴミを回収していく。
広いフロア内にはゴミ箱がいくつもある。
集めるだけでも一苦労だ。
一ヶ所、二ヶ所……と、ゴミを集め、新しいゴミ袋を設置していく。
「さて、最後は……」
ゴミ入れ用カートを押しながらフロアの最奥部、自動販売機が設置してある休憩スペースへと向かうと……
「………ねぇ、誰か来たらどうするの?」
「こんな時間に誰も来やしないだろ」
聞こえてきた艶っぽい男女の声に“あぁ、またか……”と溜め息が漏れた。
静まり返った夜のオフィス(まだ夕方だけど)は、オフィスラブにうつつを抜かした男女の格好の盛り上がりシチュエーション。
確かに社員は誰も来ないだろうけど、掃除のおばさんは現れるんだよ……と心の中で呟きながら、現場に突入する。
「すみません、失礼しまーす」
臆する事なくイチャつき現場に突っ込んだ私に、抱き合っていた男女が弾かれたように離れる。
その様子があまりに滑稽で思わず吹き出しそうになったものの、懸命に堪えて平静を装った。
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