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自動販売機横に置かれたゴミ箱から缶を回収する。 缶ゴミの回収は飲み残しが零れていたりして、臭いしベタベタするからちょっと嫌。 不満を言いたい所を我慢して淡々と作業する。 「い、行こうか」 「そ、そうだね……」 二人の世界を邪魔されて興醒めしたのか、イチャついていた二人はそそくさと消えた。 「……ったく、会社でやる事じゃないでしょうが」 二人の気配が消えたのをいい事に苦々しげに吐き出した。 「人に見られて困るなら、他所でやれっての」 一人ブツブツとボヤいていると、背後からカタッと音がした。 「同感同感。ホント、オフィスをラブホと勘違いしてる馬鹿には参っちゃうよねぇ~」 その声に驚き、手を止めて振り返ると、若い男性が立っていた。 アッシュブラウンの緩やかなウェーブがかった髪に黒目がちなパッチリ二重の大きな目。 女の私より顔が小さく、整った顔立ちの男性の突然の登場に声が出なかった。 「人に面倒な仕事押し付けて残業させてるくせに、自分は女とイチャイチャ………とんだクズ野郎だな。マジ消えて欲しいわー」 品のある可愛らしい顔立ちからは想像出来ない毒気たっぷりの台詞に度肝を抜かれた。 「オフィスラブってやつ?キモい者同士の絡みを見せ付けられて、今スッゲー吐きそう」 もう唖然とするしかなかった。
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