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多少佐伯さんに対して不満に思う事はあるものの、青柳さんに彼女がいないという貴重な情報を入手出来て嬉しかったりする。 だけど、あんな素敵な人ならきっとすぐに彼女が出来ちゃうんだろうなぁ……と思う。 青柳さんなら引く手数多で選び放題だろうし。 ましてやこの会社は綺麗で華やかな人が多いから、私みたいな中途半端な容姿の女なんか相手にされる訳がない。 通りすがりの麗しい女性社員を目で追い掛けて小さく溜め息を吐いた。 パリッとしたストライプシャツにタイトスカート、踵の少し高いパンプスで決めた清潔感漂う女性がサラサラな髪を靡かせて颯爽と歩いている。 そんな彼女とは対照的に、会社支給のナイロン素材の黒いポロシャツに洗濯し過ぎてグレーになりかけている色褪せた黒いパンツという、いかにも動き易さ重視のラフな格好の私。 足元はセールで買ったスニーカー。 ガラスに映った、髪は後ろで一つに束ねて薄くメイクを施しただけの野暮ったい自分を眺めては、また溜め息を吐く。 こんな自分じゃ、奇跡でも起きない限りは青柳さんに女性として見て貰えないだろう。
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