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ところがある日、まさかまさかの奇跡が起きた。 いや、奇跡と言ったら大袈裟かもだけど、ほんのちょっと…………いやいやいや、かなり良い事があった。 「お疲れ様です。これ良かったら飲んで下さい」 差し出されたのは缶コーヒー。 「えっ?」 戸惑う私に青柳さんは困ったように笑う。 「もしかして業務中に差し入れってまずい?」 「あ、いやいや全然……突然でビックリしちゃって…」 本当は業務中に飲食は駄目なんだけれど、バレなければ多分大丈夫かと… よく佐伯さんから飴貰ってこっそり舐めてるし。 「コーヒー駄目?紅茶の方が良かったかな?」 「あ、いや……コーヒー大好きです………けど、何で?」 中々受け取ろうとしない私に焦れてか、青柳さんが缶を私の頬に押し付けた。 「冷たっ!」 ひんやりとした感覚に思わずぎゅっと目を瞑る。 そんな私の様子が可笑しかったのか、青柳さんが「あははっ」と声を出して笑った。 「凄いクシャ顔」 屈託なく笑う青柳さん。 みっともないクシャクシャの変顔を見られた恥ずかしさで、只でさえ赤くなっていそうな顔から火が出そうだ。 それと同時に、キリッとした涼しげな目元が印象的な青柳さんが目を三日月型にして無邪気に笑う様にドキッとさせられた。 青柳さん、普段は格好良いのに笑顔はメチャメチャ可愛い。
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