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「わ、笑わないで下さいよ」
「ごめん、可愛らしくてつい」
憧れの人から可愛らしいと言われるなんて、天にも昇る思いだ。
ただのリップサービスだとは思うけど、幸せな気持ちになれる。
「ありがとうございます」
「あまり根を詰めないでね」
青柳さんから頂いた差し入れは、微糖の缶コーヒー。
正直、微糖の缶コーヒーの人工的な甘味があまり好きではないけれど、憧れの彼から貰った物は何でも嬉しい。
飲んで空いた缶を大事に取っておきたい位だ。
そして、青柳さんの優しさに感謝。
こんなさりげない優しさを目の当たりにしたら、益々気持ちが膨らんでしまいそうだ。
「あらあら青柳くん、休憩?」
奇跡の出来事に感動していると、何かを嗅ぎ付けたらしい佐伯さんがやって来た。
条件反射で青柳さんから頂いた缶コーヒーを後ろ手に隠す。
「はい、ちょっと小休止を。昼取り損ねちゃったんで」
「あらそう、なら丁度良いわ。この子もこれから休憩に入るの。良かったら連れてって」
何をトチ狂ったのか、佐伯さんが私を青柳さんに差し出す。
「えっ……ちょっと、佐伯さん?」
一時間程前に業務を開始したばかりで、休憩はまだまだ先だ。
何を言い出したんですか?!と言いたげに佐伯さんを睨むと、彼女は下手くそなウィンクをする。
合図が古い臭いけど、どうやら彼女なりに気を遣ってくれているらしい。
「凪ちゃん、10分位したら戻っておいで」
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