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青柳さんの口からまさかの言葉が出て、心臓が飛び出しそうになった。 そして、自ずと膨らむ期待。 「羽鳥さんみたいな若い女性がこういった仕事をされているのをあまり目にした事がなくて」 勝手に膨らむだけ膨らんだ期待は、ここで一気に萎む。 「ほら清掃の仕事って、結構年配の方がやってるイメージで。佐伯さんみたいな」 「まぁ、確かに……」 「だから年配の方の中に羽鳥さんのような若い女性が混ざっていると目立つというか……以前から気になってたんですよ」 同年代の女性は、汚れたトイレをピカピカに磨き上げるような仕事をまず選ばない。 床に這いつくばって、ベッタリこびりついたガムを擦り取ったりするような仕事を好んでやりたがらない。 夏は汗を沢山かくし、汗疹も出来る。 意外と肉体労働で、変に筋肉が付いて二の腕も脚も太くなる。 結構なハードワークだ。 学生時代の友達で同じような仕事をしている子は一人もいない。 皆大学を出て、アパレル企業や有名企業等の華やかな世界へと飛び込んでいった。 青柳さんが珍しがるのも無理はない。 実際によく人から聞かれる。 何でその仕事を選んだの?って。 若いなら他にもいくらでも仕事があったでしょ?とも言われる。 大部分は子育てが一段落したお母さん世代が多い。
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