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「蹴躓いた拍子に水がかかったよ。汚れちゃったじゃん」 「………すみません」 一応は謝ったけれど、それでも気を遣って人が通らないような端に置いていただけあり、腑に落ちない。 「オネエサンみたいに汚れてナンボな仕事と違って、こっちは身なりが大切なんだよ。気を付けてくれる?!」 普通に歩いてる分には、必ずバケツが視界に入る筈。 きっと余所見でもしていたんじゃないかと思う。 それか歩きスマホとか。 なのに、自分の不注意を私のせいにして当たられても迷惑だ。 取り敢えず「すみません、以後気を付けます」と頭を下げると、男性は気が済んだのか「ふん」と鼻を鳴らして踵を返した。 「ったく………これだから底辺は」 吐き捨てるように言った男性を同僚らしき別の男性が「まぁまぁ」と宥める。 「あーいう底辺な仕事、俺は絶対したくないね」 「おい……言い過ぎだぞ。まぁ、分からんでもないけど」 言いながら二人はこちらをチラリ。 それから顔を見合わせた後、声を出して笑い合った。
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