397人が本棚に入れています
本棚に追加
「っ……」
悔しさから奥歯をぐっと噛んだ。
清掃の仕事はどうしてだか世間から軽く見られる傾向にある。
何故?汚れる仕事だから?
人の役に立つ仕事だし、欠かせない人員だ。
どうして下に見られないといけないんだろう?
底辺なんて言われたくない。
落ち込むよりも憤りを感じてモップの柄を握る手に力を込める。
「今の発言はどうかと思いますよ」
不意に聞こえてきた声にハッと我に返った。
咄嗟に声の主を探す。
「誰のお陰で綺麗な職場で気持ち良く働けると思ってるんですか?撤回すべきです」
現れたのは、キリッとした顔立ちの若い男性だった。
「おいおい……青柳、先輩に向かって説教かよ。偉くなったもんだな」
忽ち不穏な空気が流れるも、青柳と呼ばれた男性は顔色一つ変えずに言う。
「人として最低な発言を聞き流せなくて、つい……尊敬している先輩だからこそ意見したまでです。後輩を失望させないで下さい」
相手を選ばずに毅然とした態度で言い切った彼に、先輩社員は「チッ…」と舌打ち。
「格好いいねぇ、青柳くんは」
「出来る男は違うね。流石だわ」
最初のコメントを投稿しよう!