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皮肉を残して撤収していく二人を見送ってから、青柳という男性が私に近付いて来る。
「………気を害されましたよね?すみません……良い方達なんですけど、今日は業務上のトラブルがあって虫の居所が悪いみたいなんです」
彼は困ったように笑った。
「あ、いえ……私は平気です。ありがとうございました」
ちょっぴりキョドりながら言うと、今度は頭を下げられる。
「いつもお仕事ご苦労様です。それから、職場をピカピカに磨き上げて下さってありがとうございます」
思いがけない言葉に胸がじーんと熱くなった。
年齢は同じ位か、少し上だと思う。
短く整えられた黒髪に細身のスーツが似合うスラリとした体型からして、スポーツマンっぽい。
「それじゃ………失礼します」
爽やかな笑顔を向けられ、不覚にもときめいてしまった。
慌ててペコリと頭を下げ、青柳さんの背中を目で追う。
不思議と視線を逸らせない。
「…………ラブロマンスの予感」
「ひぅっ……?!」
背後から聞こえてきた低い声に大きく肩が揺れた。
振り向けば、不気味な程満面の笑みの佐伯さんが居て…
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