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「彼は確か……総務の青柳 謙太くん。仕事は早くて的確。礼儀正しく、人間性も花丸で見た目も中々のハンサム……」
「よ、良く知ってますね……」
「歳はいくつだったかしら?凪ちゃんと同じ位?ちょっと上だったかしらね………まぁでも、有望株に間違いないわ。凪ちゃん、お目が高い」
そんな事細かな情報をどこで入手して来るのか、果てしなく疑問だ。
「お目が高いって………私は別に…」
そんな風に考えてないのに。
佐伯さんは「あらぁ、そう?」と年甲斐もなく小首をかわいらしく傾げてみせる。
「凪ちゃんの円らなお目々がずっと青柳くんの背中を捉えて離さないじゃな~い」
「な、何を言って……」
「恋しちゃった顔してるし」
「してませんっ!!」
楽しそうに私をおちょくる佐伯さんのお陰で体温が一気に上がった。
「凪ちゃんてば、顔が赤いわよ~」
「違います!これは単に一生懸命働いたからで……」
もし、佐伯さんの言う通りならば、たったこれだけの事で恋に落ちてしまう私はチョロい女だ。
心無い言葉から庇って貰って、ちょっと優しくされただけ………それだけなのに。
いや、でも………
―――これって、運命………?
高鳴る胸を押さえる。
羽鳥 凪、25歳。
この夏は、今まで生きてきた中で一番熱い夏になる予感がする……
「ちょっと佐伯さん!勝手に変なナレーション付けないで下さいよ!」
「オホホホ………いいじゃな~い」
佐伯さんのせいで、変な汗が沢山出た。
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