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密かなる暗い決意は着々と育まれ、機を伺っていた。
より確実に、最も効果的なタイミングで彼女を破滅させるべく。
そんな気配を察したのか、運命のイタズラか。
その日の日課を済ませた直後に学校からの帰り道でリナに出くわした。
彼と一緒ではなく一人。周囲には私たち以外に誰もいない。
バッチリと目が合ってお互いに「あっ」と声をあげて硬直する。
二人とも歩みを止めてしまい、もはや無視するには不自然な状況。
先に口を開いたのはリナだった。
「何か言いたいことでも?」
私はキっと彼女を睨み、
「・・・・あるよ。親友だって言ってくれたのに。」
と、声を絞り出した。
すると彼女は腕を組み、口角をナナメに歪めて見下ろすような視線で語り始めた。
「はん。おめでたいわね。本気でそう思ってたの?親友?んなわけねーじゃん。アンタごときに。私にしてみればオモチャよ、お・も・ちゃ。構ってやっただけでもありがたく思いなさいよ。」
「・・・あなたの本性、彼にも教えてあげたいわ。」
「あははっ。どの口で言ってるの?彼がアンタの言葉なんか聞くわけないでしょ。すっかり私のトリコなんだから。ホント、アンタみたいな根暗に付きまとわれる前に、救ってあげてよかったわぁ。さっきも独りでブツクサなんか言ってて気色悪かったし。」
「だからって、あんなやり方!」
「いいでしょ別に。私だってこの学校ではまだ彼氏がいなかったしちょうど良かったのよ。」
「この学校ではって・・」
「あらら。ちょっと刺激が強かったかなぁ?私、どこ行ってもモテちゃうのよねぇ。バイト先と、ネットのサークルと、あとは・・数えるのが面倒なほどね。こんなのフツーよフツー。今日はアンタの憧れの王子さまは部活で忙しいみたいだから、これからパパにおねだりしに行くの。連チャンになりそうだから忙しいの。アンタとおしゃべりしてる暇ないの。」
「・・・」
「ん?もうだんまり?言いたいことはもうないのかなぁ?あーあ、耳を真っ赤にしちゃってまぁ。黙ってるだけじゃ楽しくないよ?はぁ。もっと面白い反応してくれると思ったのにつまんないの。世間知らずなガキんちょはリアクションすらできないのねぇ。」
「ひ、ひとの心を何だと・・!!」
「やっだー!ヒトの心だって!いっちょ前に何言ってんの!バッカじゃないの!!つか、言えてねーし!!ドモってんじゃん!!ウケるわー!!!最後に笑かしてくれたわー!!!ちょっと近寄んないでくれるー?ド、ドモリが、ウ、ウツっちゃって、ほらうつった!ウ、ウ、うつっちゃったよぉー!!!」
悪魔のごとき耳障りな笑い声が脳に響く中、ポケットに膨らむ衝動を必死に手で押さえつける。
目をギュっとつむり、ただひたすら耐える。
まだその時ではない。今はまだその時ではない、と。
その後何も言わないままでいると、リナは笑いながら「二度と視界に入らないでね」と言い残して去っていった。
一言でも発したら破裂しそうだ
一歩でも動いたら爆発しそうだ
その寸前まできている
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