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プロローグ
「…おいで」
明かりを落とした部屋で、彼は既にベッドの中だ。
裸の上半身には、硬そうな筋肉が付いている。
紫乃を見つめる瞳に、欲望の炎が映る。
ここまできても、紫乃には躊躇う気持ちがあった。彼に近づく一歩が踏み出せない。
逡巡していると、彼が手を伸ばし、紫乃の腕を取る。強い力で、あっという間に、ベッドに引き摺り込まれた。
「もう待たない」
組み敷かれ、下から見上げる紫乃を、獲物を捕らえた猟犬の如く、喉笛に喰らい付く瞬間を心待ちにしているようだ。
もはや、これまでだ。
諦めて、身を任すしかない。
紫乃は、覚悟して、目を瞑った。
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