23人が本棚に入れています
本棚に追加
「仕方ありません。こうなったら奥の手を使いましょう」
しばらくしたあと、ジェームズは再び仕切り直した。
「奥の手?」
「無暗に使ってはいけないのですが、そんなこと言ってる場合ではありませんね」
「なぁに?」
怪訝そうに、あたしはジェームズをじろりと見た。
「あなたの望みをひとつだけ叶えましょう」
「口封じってこと?」
「そう思っていただいても」
「もし嫌だって言ったら?」
「そうなれば、私は地獄行き。あなたは逃亡者です」
「逃亡者?」
「つまりはお尋ね者。未来永劫追われる身になります」
「もし見つかったら?」
「あなたの魂は、黄泉の監獄に」
「黄泉の監獄?」
「ええ。そこで永遠の時間を過ごすことになります。どこへも行けず、転生することも許されない、永遠の孤独」
「永遠の……孤独……」
「ええ。ある意味、地獄よりも辛いかも知れません」
「そんな……」
永遠の孤独? ずっと独りぼっちってこと? 死ぬまでずっと?
あ、もう死んでるか。
いやいや、そんなの絶対嫌だ。あたしはずっと、保といたい。
「それじゃあ、あたしを生き返らせて。それがあたしの、たったひとつの望みだから」
うん。我ながらうまいこと思い付いた。これでまた、保といられるようになる。
「それはできません」
「なんでっ?」
思わずジェームズに掴みかかる。あ、この人には触れるんだ。
「あなたの命の炎は、既に燃え尽きています。再び燃やすことはできません」
顔色ひとつ変えずにジェームズが言う。
「そう……なんだ」
あたしはするりと両手を下ろした。
最初のコメントを投稿しよう!