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「じゃあさ、俺を一緒に連れてってよ」
「え?」
保、今なんて言った?
「俺の魂が欲しいって言いなよ。そしたらずっと、一緒にいられるだろ?」
「保……それって……」
自然と声が震える。何かを吹っ切ったように、保がふにゃりと微笑んだ。
「ああ。俺も死ぬ。どうせ死のうと思ってたんだ」
「なんで……?」
「あかりのいなくなった世界なんて、もう、生きてる価値ないだろ?」
「保……っ」
ああ、それで物がなくなってるんだ。いつ死んでもいいように……。
あたしは、必要最低限のものしか残っていない、保の部屋を見回した。
「お望みはそれでよろしいですか?」
抑揚のない声でジェームズが訊く。
「はぁっ? いいわけないでしょ! 保を殺したら、化けて出てやる!」
再びあたしは、ジェームズに掴みかかった。
「いや、あなたもう既にそんな感じですが」
「なんですって!」
「あかり」
保は立ち上がると、静かに首を振った。
「いいんだ。俺はあの日からずっと、あかりに会いたかった。マジで死ぬほど。だから、一緒に逝けるなら、それでいい。いやむしろ、一緒に逝きたい」
「でも……」
いやいやをするように、あたしは首を左右に振った。
あたしだって、これからもずっと保といたい。できることなら、一緒に行きたい。だけどそれは、保の命を奪うこと。そんなこと、あたしにはできないよ。
心の中で、何度も問いを繰り返す。いくら考えても、答えが出ない。そんなあたしの堂々巡りを断ち切るように、ジェームズが大きく息をついた。
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