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「わかりました。一日だけ待ちましょう」
「え?」
「明日は四十九日です」
四十九日? あたしが死んでから、もうそんなに経ったの?
「仏教では、命日から七日ごとに生前の行いを裁く審判を受け、四十九日目の審判をもって来世の行き先が決まります。だから、明日がタイムリミットです。明日までに、私はあなたを天界まで送り届けなければなりません」
「天界まで行ったらどうなるの?」
「極楽浄土へ行くか。もしくは、また生を受けて生まれ変わるか……」
そこまではわかりかねます、とジェームズは目を伏せた。
「生まれ変わる? もし生まれ変わったら、保と一緒にはいられないってこと?」
「余程の奇跡でも起こらない限り、そうですね」
「そんな……」
「でも、二人とも極楽浄土へ行くことができれば、未来永劫離れることはありません」
「極楽浄土……」
保と一緒にいたければ、極楽浄土へ行くしかない。
そのためには、まずは保の命を奪わなければ……。
「とりあえず、明日までよく考えてみてください。明日の夕方六時頃、お迎えに上がります」
「夕方六時?」
「ええ。あなたが死んだ時間に」
「あたしの、死んだ、時間……」
急に現実を突きつけられ、あたしは目の前が暗くなった。
足元がぐらつく。地に足がついてるわけはないのに。
「それでは、また明日」
頭の中に直接語りかけられた気がして、慌てて顔を上げる。ジェームズの姿は、既になかった。
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