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時雨と桃矢が会場に着くと入口で1枚の紙を配られる。
そこには演目が記されており、時雨が確認すると湖の歌姫の出番は1番最初になっていた。
しかし、舞台には中盤に登場する尺八奏者の花魁が会場内を盛り上げており、恋歌の出番はすでに終わっていたのだ。
「まあ、せっかくだ!最後まで見ていこうじゃないか!」
「そうだな。次は紅蓮の舞姫の出番か。咲はこの会場にいるのだろうか?」
時雨と桃矢は初めて見る紅蓮の舞姫「蘭」の舞いを楽しみに待つことにした。
「どういうことだい?これじゃあ、間に合わないじゃないか!」
一方、舞台の裏では黒髪を高島田に結い上げた白夜の女将が激しく怒っていた。
「数分だけお時間をいただければ直るんですがねぇ・・。申しわけないです、女将さん」
鎮魂歌の照明器具を担当する初老の男性が女将に謝罪する。
間もなく、紅蓮の舞姫の出番なのだが、照明器具が故障してしまい赤色の明かりだけがつかないという緊急事態が発生してしまったのだ。
「急いでおくれ!今日は偉いお方をお招きしているんだよ!数分でも遅れりゃあ、失礼だろう?!」
たかが数分、されど数分である。
「あの・・、女将さん・・」
「・・なんだい」
不機嫌な女将が自分に声をかけた花魁をするどく見つめる。
「私がなんとかしてみせますわ・・!」
すでに出番を終えた湖の歌姫「恋歌」が力強く答えた。
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