恋を知らない青年

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音楽を愛する国「蒼月帝国」には「ダンピール」と呼ばれる種族がいる。 ダンピールとは西洋ではヴァンパイアと呼ばれる吸血鬼と人間の間に生まれた子供のことであり、生まれながらにして強い魔力とヴァンパイアとしての力を持つ。 しかし、ヴァンパイアは大昔の蒼月帝国に存在した種族であり、現在は人間とダンピールが暮らす国である。 物心がつく頃に病で両親が他界したダンピールの少年「時雨」は「教会」という施設に保護され暮らしているが、人間の子供達から差別を受けていた。 この世界の全ての生き物には魔力という力が宿っているが、魔法を使えるわけではない。 ただ、魔力があるというだけでみな普通の人間と変わりない生活を送っている。 ただし、「占い師」と呼ばれる人間は例外である。 占い師とは生まれつき魔力の強い人間のことであり日々の生活そのものは普通の人間と変わらないが、占い師は人間とダンピールの違いが分かるのだ。 相手の顔を見た時に魔力の流れで人間とダンピールを判断できる占い師にはダンピールを快く思わない者が多い。 時雨が教会の子ども達から差別を受けているのも、子ども達の中に占い師がいた事が理由である。 罪のない10才の時雨は孤立した環境の中で「音楽」に出会った。 教会にある西洋の楽器「ピアノ」を偶然見つけた時雨は辛さや悲しみを忘れるようにピアノに夢中になっていき、楽譜を読む事はできないが自分で曲を作るようになった。 ある日、時雨がいつものように曲を作っていると1人の男が声をかけてきた。 「今の曲は異国の歌かい?」 「自分で作った・・」 それは、のちに時雨の恩人となる桜井桃矢との出会いであった。
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