別れのワルツ

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「時雨くん・・!?この金は帝都の音楽学校へ行くための貯金だったんじゃ・・」 机の上に置かれた分厚い封筒を見た桃矢が驚きの声をあげる。 「作曲家の夢をあきらめたわけではない。ただ、今は・・。その夢よりも大切な人がいるんだ・・!」 愛する恋歌を救いたい。 それが、時雨の純粋な気持ちだった。 自分の妻となれば、もう2度と疲労で倒れることもなくなり、自由に外出もできる。 時雨は恋歌の笑顔を守りたかったのだ。 「ふっ・・、あはははは!笑わせるんじゃないよ!ダンピールのくせに生意気なことを言うんじゃないよ!」 「女将・・、あなたも僕と同じ占い師だったのか・・?」 桃矢が動揺する。 「そうさ、あたしは占い師だよ・・。お客としてまでは許してやったけどねぇ。うちの花魁がダンピールの妻になるなんて話は白夜の恥だよ!この金は受け取れないね!それに・・」 女将が不敵な笑みを浮かべる。 「恋歌は昨晩、身請けされたのさ・・!13時から結婚式も始まる・・!ダンピールの妻にならなくて済んであたしは安心だよ!」
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