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肩までの長さの桜色の髪を低い位置で1つに結び、桃色の瞳をした青年、桜井桃矢は音楽家を目指しており自分の知らない曲を弾く時雨に思わず声をかけたのだ。
「僕は桜井桃矢だ!子供の頃はこの教会で暮らしていてね。今は音楽家を目指しているのさ!」
「さくらい、とうや・・?」
時雨は突然、声をかけてきた桃矢に戸惑った。
「そう!桜井桃矢だ!君には音楽の才能があると僕は思った!よかったら僕達の音楽団に入らないかい?」
嬉しい誘いではあったが時雨には迷いがあった。
「俺は、ダンピール・・。楽しそうだと思うけど、ダンピールは嫌われちゃうから・・」
占い師以外の人間には基本的には自分がダンピールであるという事は話さない時雨だが、大事な話の時だけは伝えるようにしている。
それは、自分がダンピールだとわかっていても変わらずに接してくれる人がいると信じたいという時雨の願いでもあった。
「僕は占い師だから君がピアノを弾いている時にダンピールだとわかっていたよ?楽しそうだと思うならどうだい?にぎやかな集団だがね!」
満面の笑みで問いかける桃矢の言葉に時雨が顔を輝かせる。
「すっごく嬉しい・・!ありがとう・・!」
嬉しいという気持ちも心からの笑顔も時雨にとっては久しぶりのものであった。
「ははは!ありがとうはこちらの台詞だよ!たまには教会に遊びに来てみるものだな!ところで・・」
桃矢が真面目な表情になる。
「君の名前を聞いていなかった!」
「時雨・・!」
時雨がいそいで名乗る。
「ふむ!時雨くん!よろしく頼むよ!」
桃矢が右手を差し出す。
「よ・・、よろしく・・!」
それは、小さな右手が希望の光をつかんだ瞬間だった。
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