湖の歌姫

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湖の歌姫

それから1週間後のこと。 「時雨くん!今晩の白夜への取材のことなんだがね」 「白夜」とは翡翠に1年前にできた音楽遊郭のことである。 白夜には「花魁」と呼ばれる音楽の才能に秀でた女性達がおり、今や白夜は花魁達の歌や舞を楽しむ市民に人気の娯楽施設となっているが、音楽の知識や技術の高い花魁達から直接「琴」や「三味線」を学ぼうと習い事として通う者もいる。 「我々がお会いする湖の歌姫様はだね、それはそれは美しいお方なのだそうだよ!」 「俺達はあくまで音楽についてどう考えているか、そして歌についての知識を学びに行くだけだ・・。歌姫様に会いに行くわけではない」 この1週間で時雨は恋歌と話した「リンゴの歌」を完成させており「雨の妖精」という題名で歌詞も作ってある。 さらに、恋歌と出会ったきっかけとなった曲にもあれから歌詞と題名をつけた。 「まあ、取材がてら歌も楽しもうじゃないか!僕も音楽と結婚した男だからね!あまり恋愛というものには興味はないのだよ!やっと大きな仕事が片付いて時間ができたんだ!僕は1年も待ったのだよ?!ぜひとも彼女達から音楽についての意見を聞いてみたいものだ!」 胸に抱える気持ちが何なのか今もわからないまま、時雨は白夜へ行く準備をはじめた。
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