湖の歌姫

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「ようこそ、白夜へ」 建物の入口をぬけると大きな広間があり、たくさんのお客でにぎわっていた。 「予約した桜井桃矢だ!湖の歌姫様と会う予定になっている!」 「少々、こちらでお待ちくださいませ」 夕焼け色の髪をした花魁に案内され、時雨と桃矢は広間の椅子に腰掛ける。 「む?君は洋菓子屋の咲じゃないか!」 時雨達の近くにある椅子に腰掛けていた茶髪の青年に桃矢が声をかける。 「お前達は・・!ダンピールと桜井桃矢?!」 桃矢と同じような髪型に白い着物を身に纏い緑色の瞳をした咲は赤字だった先代の和菓子屋を継ぎ、流行に賭け1代で人気洋菓子店に変えてみせた占い師の青年である。 20歳の若い店主であり時雨のことをダンピールと呼ぶが実は時雨の作る曲が好きで、時々新作の洋菓子を桜井邸に差し入れしてくれるという一面もある。 「咲も来ていたのか。俺達は音楽の取材で来たのだが、ずいぶんにぎやかな場所だな」 「ほう?音楽の取材か・・。新曲は何かできたのかい?答えによっては私の自信作を持って行ってやってもかまわないよ?」 時雨が答えようとした時、赤い髪をした花魁が咲に声をかける。 「咲様、お待たせしました。お話とはなんでしょうか?」 髪と同じ色の瞳に真紅の鮮やかな着物、長い髪は高い位置で1つに結んでおり、落ち着いた話し方をする女性だった。 「実は・・、蘭に渡したい物があったんだ」 咲は椅子から立ち上がると広間の人が少ない場所に蘭と共に移動する。 「時雨くん!咲と話している蘭という方は紅蓮の舞姫様だぞ!」 紅蓮の舞姫「蘭」は咲から三日月の装飾がほどこされた簪を受け取るとその場で身につける。 「あの2人・・、恋人なのかね?だが、花魁を妻にするためには身請け金が必要だ・・。ふーむ。咲の秘密を知ってしまったな!」 「恋か・・」 咲と蘭が楽しそうに話している様子を見守っていると、茶色い髪をした少女が声をかける。 「お待たせしました!ご案内します!まだ見習い中ですがお客様のご案内はできますので、よろしくお願いします!」 10代の前半くらいの少女も働いていることに時雨は少し驚いたのだった。
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