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第三章・始まりの扉
「まず、今の状況をざっとまとめてみましょう」
ネウマさんも【後ろ】で聞いてくれています、と前置きして、エスタシオンはどこから取り出したのか、一枚の白紙を皆の前に置いた。どこからか木製のテーブルも創られており、一同は「もうこの人何でもありだな」と失笑していた。
「はい、落ち着いて。まず、ここがヴァルド、こちらがアーリア、ここがアクア。そしてここがログレア、ここがセレスです。これらの国々で今、共通して起こっている問題は何でしょう?」
指差しながら地図が現れてくる仕様に驚きつつも、シェーナは口を開く。
「世界中に一斉に現れた異能者──いえ、能力者への対処でしょうか。認可というか容認というか……」
エスタシオンは、眉間に皺を寄せ俯いたシェーナの頭をそっと撫でた。
「そう、各国は【あの日】以来現れた国中の能力者の統率やいざこざの平定に頭を悩ませています。セレスは幸いそうした対応に慣れた国。そしてヴァルドは【アデュラリアの記憶とともに受け入れている】、アクアには強い発言力と予知能力を持つ巫女がいて、平定されている。ログレアは技術力と能力の融合の探求に力を入れることで難を逃れています。ただ、アーリアは元々能力者の扱いに不慣れな上、ずっと排斥してきた国。現在も国中が困惑する中、暴動も各所で起きているといいます」
「アーリアは、巫女のような統率者を必要としているということかな?」
アズロが尋ねて、エスタシオンは微笑む。
「そうです、そして、操りやすい者を──国の傀儡にするために」
「なんてこと……」
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