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4 しあわせになろう
冬馬とご両親に助けられたシロクロは、愛情たっぷりに今日まで育てられたようだ。
幸せそうに喉を鳴らして、安心し切ったように身体を伸ばしてあたしの膝の上にいる姿は、警戒心のかけらもない。思わず嬉しくて笑ってしまう。
話は尽きることがなくて、形の崩れてしまったシュークリームがとても美味しかった。
シロクロは、こんなに素敵な家族に出会うことが出来て、愛されて育ってきて、幸せだったんだ。そう思うと、やっぱり嬉しさで目元が潤みだす。
すっかりあたしの膝の上で眠ってしまったシロクロをそっと優しく撫でた。
「シロクロ……ううん。ハートを、幸せにしてくれて、ありがとうございます」
「優ちゃんも、私たち家族と一緒に、これから、たくさん幸せになりましょうね」
優しく笑うお義父さんとお義母さんに、あたしは心から笑顔になれた。
冬馬と手を繋いで歩く帰り道。
「あ、そういえばさ、優に出逢えたのって、今思えば、ハートのおかげなのかもしれない」
「……え?」
「優を初めて見かけた場所って、ハートを助けたベンチだったんだよね。いつもあのベンチに座って本を読む優に、ずっと惹かれていて……」
「え! 初めて聞いた」
シロクロに会いたくて、暇があればあのベンチに座って、シロクロに会えることを一人願っていた。
シロクロには会えなかったけれど、冬馬があたしを見つけてくれて、シロクロと会わせてくれたんだ。
「うん、なんか、ずっと前から知ってたとか、恥ずかしくて言えなくて。偶然を装って声をかけたのが、はじまり」
照れながら笑う彼が愛おしい。
きっと、ハートがあたしに冬馬を会わせてくれたのかもしれない。ずっと会いたいと思っていた。これからはいつでも会えるね。
幸せいっぱいな未来が、今から待ち遠しい。
──fin
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