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そっと近付くと、小さな段ボール箱。その中を覗いてみる。震えながら、丸くうずくまっている子猫がいた。
屋根もなくて、段ボールの箱はもう雨でぐっしょりと濡れている。敷かれている薄っぺらいタオルもびじゃびじゃだ。
雨に当たらない様にしゃがんで傘をさしてあげた。急に雨粒が当たらなくなったからか、子猫はゆっくりと顔を上げた。くるりとまんまるい瞳があたしを見つめた。
「このまま雨に当たっていたら、風邪をひいちゃう。どこか別なところに連れていってあげるからね」
傘を首に固定して、子猫の入ったダンボールを持ち上げた。水分を含んでふにゃふにゃしているから、底が抜けてしまわないように、気をつけながら。猫に雨が当たらないように、気をつけながら。辺りを見回して、ベンチの下へダンボールを押し込んだ。ここなら雨に当たらないかな。少しはマシかな。
「お腹空いてない?」
心配して聞くけれど、子猫は首を傾げて不思議そうに目をぱちくりするだけ。
「飲み物も欲しいよね?」
うーん、と悩みながら、あたしは「ちょっと待ってて」と、子猫に待つように言うと、立ち上がって急いで家に帰った。
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