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集合住宅の二階。自宅まで階段で駆け上がる。
閉じた傘から滴る雨水がコンクリートの階段にいくつもシミを作った。
「ただいま!」
玄関の重たい扉を開けて、無造作にランドセルを放り投げると、食器棚から赤ちゃんの頃に使っていたプラスチックのクマさんのイラストが描いてあるお皿を取り出した。
「優おかえり」
「あ! お母さんただいま! あのさ、もう使わないタオル一枚ちょうだい!」
「え、タオル? もう使わないやつ?」
お風呂掃除をしていたのか、ズボンの裾を捲り上げたお母さんがお風呂場から出てきた。お母さんはあたしの言葉にお風呂場へ戻って、「雑巾にしようとしていたこれでもいいの?」と、色褪せてはいるけれど、まだふわふわ感の残っているタオルをくれた。
「うん! すごくいい! ありがとう、いってきます」
トートバッグにお皿とタオルとテーブルに置いてあった食パン。それと、おやつに飲もうと思っていたパック牛乳を入れて、あたしはすぐに家を飛び出した。
ベンチの下で大人しく待っていてくれた子猫に、持ってきたタオルを箱の中に敷いてあげた。ふわふわが気持ちいいのか、濡れた体を擦り付けて寝そべっている。
白と黒のブチ模様をしているから、名前は「シロクロ」と名付けた。シロクロも気に入っているようで、あたしが名前を呼ぶと、嬉しそうに「にゃあ」と鳴いた。
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