1 雨の日の出会い

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 あの日から毎日、あたしはシロクロのところへ通った。朝はいつもより少しだけ早く家を出る。  通学路の途中の公園で、「おはよう」とシロクロを撫でてから学校へ向かう。帰りもまっすぐは帰らずに、必ず公園に寄って、シロクロに会ってから帰る。そんな毎日を過ごしていた。 「あれ、シロクロの背中、ハートが付いているね」  撫でるだけが精一杯だったあたしが、初めてシロクロを両手で抱き上げた日、見つけたのは、背中の模様。黒い毛並みの真ん中に、くっきりと白いハートが浮かび上がっていた。 「わぁ、可愛い!」  本当は、ウチで飼ってあげられたら良いんだけれど……ここへ来るたびに思うこと。うちは集合住宅でペットは禁止。いままで飼ったことがあるのはお祭りで掬った金魚くらいだ。 「ごめん、シロクロ。また明日来るからね」  「みゃー」と鳴く声に何度も振り返っては手を振る。  家に帰ってからも、本当はずっと心配なんだ。夜の間に他の猫や動物にいじめられているんじゃないかとか、気温の低い日は寒くて震えているんじゃないかとか。  こっそり連れて帰ろうかと、何度も何度も思った。だけど、前に野良猫を連れ込んだ住人がいた時に、管理人さんが殺処分所っていう所へ連れていったって話をしているおばさんたちがいたことを、あたしはよく覚えていた。みんな「ひどいわ」とか、「かなしい」とか、良い雰囲気ではなかった。だから、もしもシロクロがそんなことになってしまったら、それはあたしのせいだし、そんなことにはなってほしくない。  だから、家の中に連れ込むことは出来ないし、今のままがシロクロにとっては一番良いんだと、眠る前に毎日自分を納得させた。
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