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「シロクロー、おはようっ」
いつも通りの朝。シロクロに会ってから学校へ向かうためにベンチの下を覗いたあたしは、そこに何もなくなっていることに気がついて、言葉を失った。
全身から血の気が引いていく気がした。
「……シロ、クロ……?」
あれ? どうしていないの? どこに行ったの? 散歩? だけど、段ボールもタオルも無くなっている。誰かに……連れて行かれちゃった?
「おかあさぁんっ!!」
学校へ行くことも忘れて家へ戻ったあたしは、号泣した。驚いたお母さんの胸に飛び込んで、ランドセルもおろさずにそのまま泣き続けた。優しく頭を撫でられて、しゃっくりをあげるあたしは、少しずつ落ち着きを取り戻す。
「もう大丈夫? お母さん、小学校に電話入れて来るから、ランドセルおろして何があったのかお話してちょうだいね」
立ち上がったお母さんから離れて、あたしは言われた通りにランドセルをおろしてテーブルの上のティッシュを手に取ると、鼻をかんだ。
暖かいココアを淹れてくれたお母さんに、今までのシロクロとのことを全て話した。
「きっと、優しい人がシロクロちゃんを見つけて、連れて行ってくれたのよ。大丈夫よ、その人のところで、幸せに暮らすわ。もう、雨も風も寒さも心配しなくて良いし」
慰めてそう言ってくれるお母さんの言葉や表情は優しかったけれど、やっぱりあたしは寂しかった。
シロクロに会いたい。会いたいよ。シロクロが大好きだった。ずっと一緒にいたかった。守ってあげたかった。
時々思い出しては、あたしは公園のベンチに座ってシロクロが帰って来るんじゃないかって、期待もしてみたけれど、もう一度シロクロに会えることは無かった。
シロクロ……どうか元気で、幸せでいてね。
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