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3 傷を負った子猫
学習塾からの帰り道、薄暗くなった公園で、猫が互いに睨み合っているのを目撃した。
その場には僕しかいなかった。
片方の猫は体も大きくて、ものすごい勢いでもう一匹の子猫に襲いかかっていた。
叫ぶような鳴き声をあげる子猫を見ていられなくなって、そばにあった木の枝を手に取り「こら──っ」と、足を必要以上にドタドタと鳴らして近づいて行った。
猫は僕の形相に驚いたのか、一瞬だけこちらを見てからすぐに逃げて行った。
残った子猫に視線を向ければ、足から血を流してぐったりと倒れている。その姿に背筋が凍る気がした。
このままだと、死んでしまうんじゃないか。
ベンチの下に置いてあった段ボールを見つけて、そこに子猫を運び入れた。急いでうちへと帰らなければと思った。だけど、家までは頑張って走ってもここから二十分はかかる。
うちに連れ帰ったとしても、その後どうしたら良いんだろう。うちは獣医でもなんでもない、ごく普通の家庭だ。
今頃、母さんが夕飯の支度をして僕の塾の帰りを平和に待っているんだ。
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