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「いったい何があったのですか、鳥恒先生!?」
「まさか―――――――――俺らが原因すか?」
「気にしなくていい。原因ではなく、『きっかけ』なのだから。」
皆の表情が真顔になる中で、鳥恒先生は教えてくれた。
「馴染みの――――――古い付き合いの警察幹部に、蓮君が録音してくれた檜扇湖亀の殺人の自白データを渡した。それが原因だ。」
「ええ!?じゃあ、今も見張られて――――――――!?」
「まいてきたから大丈夫だ。一緒にいた部落の友達が足止めしてくれて、な。」
「どうして見張られてるのですか?」
「犯罪を犯した人物が、降嫁した皇族の義理の母だからだ。つまり、宮内庁としては、皇族の身内に犯罪者を出すのは非常に困るそうだ。」
「じゃあ、やっぱり捜査は――――――!?」
「されないだろうな・・・。竜憲兄上の殺害を世に広めることはできない。」
そう語る表情は辛そうだった。
(無理もないわよね・・・最愛の家族を、兄弟を殺されて、うやむやにされてしまうのだから・・・。)
「蓮君・・・わしが光憲と改名したのはね・・・竜憲兄上への供養も込めてなんじゃ。」
「お兄様へのご供養ですか?」
「初耳っすよ師範!?」
「人様に話すのは初めてだからな・・・。」
遠くを見つめるような目で、寂しそうに語る僧侶。
「極楽浄土の天国の『光』の中に竜『憲』兄上の魂があるようにと・・・願掛けをして決めた名だ。」
「竜憲さんの竜は使わなかったのですね?」
「わしら兄弟は、感じは違えど、『たつ』のり、『たつ』ひこ、『たつ』やの、『たつ』で統一されておる。『竜』だと、読みで、次男とかぶってイヤだったんじゃ。だから、兄上にしか使われていない感じを選んだ。」
「そうでしたか・・・。深く考えて、意味を持って、決められたのですね・・・。」
「ああ・・・願わくば、竜憲兄上が極楽浄土で幸せに暮らしていてくれれば・・・わしが死んだ時に、お迎えに来て下さればいいと願っている・・・!」
「鳥恒先生・・・」
「鳥恒師範・・・!」
「あーそれは無理だぜ。」
しんみりした空気をぶち壊すのんきな声と発言。
瞬時に、鳥恒先生の顔が般若になり、私達は青ざめた。
その人へと視線を送りながら。
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